01 web electro index *
□hakua 02:http://xx.electro.xx
でてこねぇ・・・・!!
白亜は半ば自棄になりながらマウスをクリックしていた。
最初はソフトを使ってネット内を検索していたのだが、でてこなかった。
次に色々なサーチエンジンで探してみてのだが、やっぱり出てこない。
最終的に白亜は自分の手でクリックしながらリンクからリンクへと探すという、実に
白亜らしくない方法にでている。
「これって俺の探し物より"web electro"とやらを探す方が大変なんじゃないか
・・・?」
大体あるかどうかもわかんないのに・・・。
飽きてきた白亜がぶつぶつと呟きながらマウスをクリックしたそのときだった。
「・・・あ!」
緑か水色かわからない背景に、赤い文字で「web electro」。
「あった・・・」
間違いなく"あのサイト"だった。
白亜は慌ててそのページに目を通した。
どうやってきたのかはわからなかったが、そんなことは問題ではない。
"本当にこのサイトで探し物が見つかるのか"大事なのはそれだけだ。
たしかに、このサイトは探し物ならばなんでも手伝ってくれるとかいてある。
しかし絶対に見つかるとは書いてないし、どこの誰がやっているのかもわからない。
まして、白亜の父親の会社の系列会社だったら・・・?
目を通し終え、そこまで考えたところで白亜は手を顎の下にやって悩んだ。
「どうしようか・・・。」
思わず呟いた言葉に、右側のパソコンが反応する。
『いっちまえ』
白亜の手が無言の沈黙を破らずに、画面のスイッチにのびた。
そのまま右側の画面の電源だけ切ってしまうと、白亜は決心してnavigationの探し方
というところをクリックした。
まずは何事もhow toからだろ。
白亜がそうおもいながら自分の考えに頷いていると、ひゅっという音がして横に白亜
よりも年下に見える華奢な少年が出てきた。
少年は今は白くなってしまった画面に先ほどまで映っていた、サイトの背景と同じ色
のスーツを着て、赤いネクタイをしている。
「web electroのご利用、ありがとうございます。探し方サービス担当、シズチで
す。お客様は初めての方ですか?」
ニコニコと笑いながらいう少年を前に、白亜は驚きのあまり呆然とする事しかできな
い。
「・・・お客様?」
そんな白亜に、何か気に障ることでもいいましたでしょうか?、とシズチが不安そう
に首をかしげて尋ねてくる。
「あ、い、いやなんでもない」
それを合図代わりになんとか自分を取り戻すと、白亜はシズチにむかっててをのばし
た。
「?」
シズチが不思議そうにまた首をかしげる。
さらりと少年にしては長い淡い栗色の髪がゆれた。
こいつ、首を傾げてばっかりだ。
白亜はそう思いながらも、その原因が自分にあるとわかっていたのでそのことについ
ては黙っておく事にした。
「俺の名前は白亜。初めての方です。ヨロシク」
白亜が自己紹介をするとようやくその手が握手を求めているのだという事に気づき、
シズチは慌てて白亜の手を握った。
「よ、よろしくおねがいします!」
やけに嬉しそうなその様子に、今度は白亜が首をかしげる番となる。
すると、シズチはニコニコとした顔で白亜の手を握ったまま語り始めてしまった。
「実は僕今日が始めての仕事なんですよ〜。こないだまでサービス精神の塊!見たい
な人の下で散々、散々!散々!!しごかれて、ようやく現場を持たせてもらえるように
なったんですけど〜。もう最初がどんな人だか全然わかんなくて。ほら、客商売って
客選べないでしょう?理不尽だなぁと思うんですけど〜。ほら、やっぱり人間どうし
てもあわない人間てのががいるじゃないですか。その点、こんな可愛い人が始めての
お客様だなんて嬉しいな〜。これからも仕事がんばれそうですよ〜。あ、そういえば
なんで僕がこの仕事に着いたかといいますとね!・・・」
「・・・お客様の前で私語は慎めってその先輩に言われなかったのか?」
放っておくといつまでも喋っていそうなシズチに、白亜は痺れを切らして話しかけ
た。
「あ!そうだった!」
とたんにシズチが白亜の手を離し、怒られた犬のようにしょんぼりとする。
「ご、ごめんなさい・・・」
「いいから、探し方について教えてくれ」
泣かれても困る、と白亜は特に責めることなくシズチに言葉を促した。
「あ、はい。それでは・・・
まず、サイトのトップページにある注意書きはよまれましたか?」
「あぁ。たしか・・・」
利用できるのは一日に一度、12時間以内。
回線を切ったり、探し物が見つかった時点でサービスは終了。
だったよな?と白亜が聞くと、シズチは満足そうに頷いた。
「そうです。ちなみに、それ以外でも終わらせたいときはお客様が言ってくだされば
やめる事ができます」
「白亜」
むっとして白亜が呟く。
「え?」
シズチは意味がわからずに聞き返した。
「白亜。せっかく名前を教えたんだから名前で呼べよ」
「あ、はい・・・。それでは白亜さんがいってくださればいつでもサービスを終了する
ことができるというのはいいですか?」
憮然としたまま頷く白亜に、シズチは気まずさを胸に抱いたまま話を続ける。
「探し物をしたいときはトップページの項目から選んでいただければ、それぞれの担
当が現れますので。また、同じ人がいいときは検索窓にその人の名前を入れていただ
ければその人物が出ます。あと、探したいものが項目にないときは探し方サービスの
担当に言ってくだされば専門の者をおよびします。白亜さんは、何をお探しです
か?」
探し物。
白亜には、10年以上探し続けてきたものがある。
だが、まだ信用できていないこのシステムでいきなりそれを探すことはできなかっ
た。
少し考えて、白亜は口を開いた。
「狐。」
「え?」
またもや、シズチが聞き返してくる。
聞き返すということはサービス担当においてしてもいいものだろうか?
そんなことを考えながら白亜は狐についての説明をした。
「俺が小さい頃にあった狐なんだけど・・・みつかる?」
「狐ですか・・・すみません、しばらくお待ちいただいてもいいですか?」
白亜が頷いたのを確認すると、シズチは白亜に背を向けてぶつぶつと呟き始めた。
「あ、はい・・・え?そうなんですか?じゃぁ・・・・あ、はい。はい。それでいいと思い
ます。では説明をするのであと一分ほどで、よろしくおねがいします」
話がついたのか、シズチが元の体勢に戻った。
あ、そういや椅子勧め忘れてた。
白亜はそう思ったが、あと1分くらいで帰るそうだしいいかと納得した。
そんな白亜の考えも知らず、シズチは健気に一生懸命説明する。
「実は、白亜さんの探し物は動物なので動物担当者がお手伝いさせていただく予定
だったのですが、その者が今野生のライオンに襲われて重病のため、急遽人物担当の
者が変わりになりました。よろしいでしょうか・・・?」
「ん?別にいいよ」
担当者がライオンに襲われているところを想像した白亜は大変な仕事なんだなと憐れ
みの目でシズチを見た。
「・・・いっておきますけど、僕はライオンに襲われたりしませんからね?」
人がせっかく憐れんでやったのに。
「・・・お前なら変なおじさんやおばさんに襲われるかもな」
生意気にも反抗してきたので白亜がそういうと、シズチは想像したのか顔を真っ青に
させた。
「・・・ガンバレ」
「・・・心がこもってませんよ、心が」
ほぼ涙目のシズチに白亜がニヤリとしていると、いきなりシズチが慌てだした。
「いけない!!もう時間だ。それじゃ白亜さん、今度僕のこと指名してくださいね!」
「は?なんで俺が?」
シズチのお願いに白亜が不満を漏らすと、シズチはどこか寂しげな瞳で応える。
「だって・・・僕からは白亜さんに会えないから・・・」
あぁ、きっと本当にこの仕事がつらいのはこれなのだろう。
なんだか自分まで寂しくなってきた白亜は、それを隠すようににやりと笑うと腕を組
んだ。
「しょうがないから呼んでやるよ。ま、それまで仕事がんばれよ」
「はい!」
白亜の了承に、シズチは満面の笑みを見せる。
その次の瞬間、シズチは消えた。
そして、シズチのいたところには入れ違いで一人の男性が立っていた。
「今回担当する、浅葱(あさぎ)だ。普段は人探しを担当してる」
その男はさっきまでいたシズチと同じ服を着ているのに、印象がまるで彼とは違っ
た。
身長が170cmある白亜よりも10cm以上高いであろう背。
しっかりした体系に、短めの黒髪。
いやみなくらい整った男らしい精悍な顔立ち。
どれもが人の目を引いて仕方がないだろうに、白亜は浅葱と名乗った男のそんなとこ
ろにはまったく視線がいかなかった。
ただひたすら白亜の目を奪ったのは、その男の瞳。
それは、白亜と同じ、誰かを憎みつづける人間の目だった。
01 web electro index
紫 蒼華さまのHP 「無空の書架」